連理

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木の上にあれば綺麗な葉っぱも落ちてしまえばただのゴミだ。掃いても掃いても終わらない繰り返しの作業にやる気など湧くはずもなく、僕はいつものように欠伸を溢した。 そろそろ終わろうか――丁度そんなことを考え始めた時たった。 突然視界の隅に、鮮やかな赤が転がってきた。 「……毬(まり)?」 今時珍しい。そんなことを思って首を傾げたその瞬間、再び鮮やかな赤が目に映る。 一瞬、びくりと目を見開いてしまったのはその外見のせいだ。 着物姿に肩で揃えられた綺麗な黒髪。まるで市松人形のようなその姿は、都会とかけ離れたこの辺りでも流石に見たことがない。 住人の少ない小さな町だ、知らない人間などいない。誰かの親戚だろうか。 少し年下なのか、少しだけ背の低いその少女は砂利の上で止まった毬を拾い上げ、ゆっくりと僕を見つめる。 本物の人形のように整った顔立ち。 その長い睫毛に縁どられた大きな目に思わず息を呑んだ。 しかしその目は無邪気とは程遠く、ただ物を見るかのような眼差しで僕を一瞥したあと、その少女は何ごともなかったかのようにくるりと身を翻して駆けていく。 残された香のような匂いが、微かに風に流され鼻を擽った。 これが、僕たちの初めての出会いだった。
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