連理

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僕しか知らない女の子。 周りにいる女の子とは違う、酷く冷めた目。初めて見たその目が無性に脳裏に焼き付いた。 話してみたい。 そんなことを考えてその後何度か一人で家の近くまで行ったこともあった。 でも硝子越しに垣間見たあの日以降、何度見ても彼女が僕の前に姿を表すことはなかった。 今思えば半ばストーカーだろうとつっこむのだけれど。あれが、まだ幼かった僕の初恋だったのだと思う。 幼い頃の、淡い思い出。 半年も経つと、そんな僕でも姿を見せない住人のことはたまに思い出す程度になり、遊びに勉強にと忙しい頭の中から徐々に忘れ去られていった。 それでも秋、境内を掃いていると時折思い出すことがあった。 夜、明かりだけが灯る不思議な家。 学校もある。きっと子どもだった彼女はあの時たまたま遊びに来ていただけで、今は別のところに住んでいるのだろう。元よりあそこは別荘なのだ。 いつからか、そう納得するようになっていた。 小学校を卒業し、中学を出て、高校生になり。 周りの友人が次々に都会への進学を考え始めた。 それは、そんな頃だった。 その日、僕は隣町のコンビニでのバイト帰り、すっかり暗くなった道を自転車で走っていた。 ところどころにしかない汚れた外灯には虫どもがたかっている、真夏の蒸し暑い夜だった。 不意に、緩やかにのぼる道の向こう、僅かに開けた場所にある小さく寂れた公園から口笛が聞こえてきたのだ。
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