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三番エリアの終わりが近い。この通路をまっすぐ進み、あの扉を開ければ、そこには四番エリアが存在している…筈だ。
怖さではなく、期待でドキドキしながら扉を開ける。
外の光が差し込んだ。
外に、出た? お化け屋敷を抜けたってことか? じゃあ四番エリアは?
振り向くが、一方通行の向う側は、扉が外からは開かない仕組みになっている。中へ戻る方法などない。
急いで入り口の方に回り、俺は、そこに立っている係員に声をかけた。
「あの、ここのお化け屋敷って、四番エリアがありますよね?」
「四番…? いえ、うちのお化け屋敷のエリアは三までですよ」
「でも、俺、この前来た時、確かに四番エリアに入ったんです。こう、処刑場みたいな造りの…」
それを口にした途端、係員の顔色が変わった。
「お客さん、入られた方なんですね」
入られた方…やっぱり四番エリアはあるんだ。でも、さっきもう一度お化け屋敷に入った時には行きつけなかった。
もしや隠しルートがあって、前回は、知らずにそっちへ進んでいたのか?
とりあえず、一回お化け屋敷に入り、四番エリアに入ったことは告げてるんだ。隠し情報だとしても、そういう客相手なら某かの説明はしてくれるだろう。
「あのっ、四番エリアっていうのは…」
「これ以上関わらない方がいいです。せっかくこうして無事に戻って来られたんだから」
俺の言葉にかぶせるように係員が言う。その姿が揺れたように見えた。
「もう、ここのお化け屋敷に入っちゃダメですよ。でないと、帰れなくなりますから…私みたいに」
人が、目の前で消滅するのを、俺は生まれて初めて見た。そして、生まれて初めて、これ以上はない恐怖を感じた。
あれ以来、映画にしろゲームにしろ、ホラー物には関わっていない。どこの遊園地に行ってもお化け屋敷には入らないし近づきもしない。
そして、四番エリアのことは、二度と口にしていない。それでも、時々あの処刑場のたたずまいが記憶に甦るたび、俺は強い恐怖を感じ、背筋をぶるりと震わせている。
四番エリア…完
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