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四番エリア
今日は彼女と遊園地でデート。
あらかじめ、園内のコースは決めていたけれど、お化け屋敷の直前で、どうしても無理だとゴネられた。
ここのお化け屋敷は怖いと評判で、ホラー系が好きな俺としては、来たからには入りたいアトラクションだ。
俺がついている。怖いといっても作りもの。そう訴えるけれど、どうしても無理の一点張りで聞いてくれない。それでも妥協案を出し合い、どうしてもというのなら、自分は外で待っているから、一人で挑んできてということになった。
コースが決まっているので何十分もかかってしまうが、色々遊んで少し疲れたから、お茶でも飲んでいると言ってくれる。それに甘えて、俺は単身お化け屋敷に足を向けた。
中は、予想以上の凝り方だった。
じんわりホラーから脅かし系まで、実に堪能できる。
俺は、ホラーは好きだけど怖くないから、単純に楽しいと思うだけだけれど、普通は充分肝を冷やすんだろうな。
そんなことを考えながら隅々までを楽しみ尽くし、俺はお化け屋敷を後にした。
外に出ると、宣言通り、彼女はベンチで休んでいた。さすがに少し退屈していたのか、園内ガイドブックをぱらぱらと眺めている。
「お待たせ。遅くなってごめん」
「あ。お帰りー」
買っておいてくれたらしい俺の分のお茶を差し出され、俺は彼女の隣に座った。
「どうだった?」
「いやー、楽しかった。中、細かいトコまですっげぇリアルでさ」
中に入るのはいやだけど、話を聞くだけなら問題ないらしく、彼女が感想を問うてくる。それににこにこと答えていると、ふいに彼女の顔色が変わった。
「どうしたの?」
「四番エリアって何?」
ここのお化け屋敷は大きくエリア分けされていて、四番エリアは出口手前の最終区域だ。前の三つに比べて手狭だったけれど、処刑場みたいな部屋を再現した空間には凄まじいリアリティがあって、実に見事だった。
でもその話に、彼女は怪訝そうに首を傾げたのだ。
「ガイドブックに、四番エリアなんて書いてないよ?」
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