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高校生だったはずの自分が、小学生のロリになっている。
そんなこと、あり得るのか。いや、あり得ない。あり得ないはずだ。漫画じゃあるまいし。
てか私誰だっけ?
どこの学校の生徒?
どんな風に生活してるの?
分からない。分からない。何も分からない。
分かっているのは__ここは私が知っていて、生きてきた世界ではないということ。
それを認識した直後、私と世界の間に、確かに分厚い壁が存在することを知った。
絶望にも似た、喪失感。
気づけば、全力で駆け出していた。
さっき横切った公園を通り過ぎ、小学校を通り過ぎ…メチャクチャに走り回った挙句、辿り着いたのは河原だった。
『…はぁ…はぁ』
肩で息をするとはこのことか。
ドサ、と河原の土手にへたり込む。
両目から涙を溢れさせていることに気付いたのは、その時だった。
『なんでこんなことになってるの…なんで……』
そのまま、膝を抱えてうずくまっていると、頭上から声が降ってきた。
「どうしたんですか?」
声に反応して顔を上げる。
年若い大人の男性が柔かな笑みを浮かべていた。
『……』
「あ、怪しい人じゃないですよ。えっとね、自己紹介をしましょうか」
そう前置きをして、男の人は隣に座る。
「ボクの名前は黒羽ツカサ。花の二十歳のお兄さんです」
『…星見、イリス』
自分の名前は、驚くほどさらりと出てきた。
星見イリス。
それが今の私の名前らしい。
「どうして泣いてたの?」
『…この世界が、私が知ってる世界じゃないから』
ツカサさんの目が見開かれる。
『こんな世界…私は知らない!何も知らないの…』
「…そうだったんですか」
でも、とツカサさんは言葉を続けた。
「怖がらなくてもいいんですよ。この世界だって、君が知っている世界となんら変わらない世界ですから」
色んな人たちが、色んな場所で笑ったり泣いたりして、1日1日を積み重ねているんだと。
ツカサさんはそう語った。
「どうです?どこか違いますか?」
『…違いません。同じです』
道行く人たちは、私が知っている日常を普通に過ごしていた。
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