激突のジブラルタル

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エンジンの唸る音。 1500馬力のハ109は、絶好のコンディションなのか、一際、快調なエンジン音を上げている。 『イギリス空軍司令部からの連絡だ。敵は、まもなくドーバー海峡を越える模様。既に、ロイヤルエアフォースの先陣は、敵護衛戦闘機隊と空戦に入っている。おそらく、我々はその撃ち洩らした爆撃機が目標になるだろう。我が隊は、その爆撃機も目標だが、撃ち漏らした戦闘機も目標でもある。爆撃機は、双発の屠龍部隊に任せる』 飛行第65戦隊第一中隊、第一小隊、第ニ分隊の隊長機に搭乗する御厨栄一郎少尉が、鍾馗に新しく搭載されたイギリス製の無線機から、飛行戦隊隊長の黒江保彦少佐のクリアーな通信の声が聞こえてきた。 イギリスに着くなり、整備中隊が真っ先に行ったのがこのイギリス製の無線機の搭載である。 これは、イギリス軍とアメリカ軍との行動を円滑にするために、欧州派遣軍司令部からの、厳命である。 そして、それと同時に、イギリスまでの航海途中に英語を勉強させられ、一通りの英語を話せるようにさせられた。 なぜなら、大日本帝国は、連合国の一員であるため、帝国空軍パイロットであるなら、英語ぐらい話せないとダメであるからと理由である。 搭乗員は、揃って不満をあげたが、第13航空軍司令である加藤健夫大佐が、率先して搭乗員と一緒に聴講したので、みな、渋々、英語を覚えたのである。 この苦労が実ったのかは定かではないが。 イギリス、ロイヤルエアフォースのパイロットと、訓練中に英語を通じて世間話ができる搭乗員も現れた。
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