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涙でぐしゃぐしゃの顔で、僕は携帯を見る。
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憲斗へ
理沙です。元気かな?
理沙は、実は重い病気でした。
珍しい病気らしくて、病院のある東京に引っ越しました。
このメールはね、日時指定で、送るようにしてたの。
だから、これの送信を中止しなかったってことは、
理沙は、たぶん死んじゃったってことです。
言わなくてゴメン。言えなくてゴメン。
夢を邪魔したくないとか、嫌われたくないとか、
色んな理由で気付けば、こんなに時間が経ってた。
憲斗と幸せになれなくて、ゴメンね。
夢も大切だけど、自分の幸せってのも、
しっかり叶えろよっ。絶対だぞ!
死んだって…、みんな仲間だし…。
たかが60年なんてどの道すぐに終わるから、笑って生きてね。
いつも大好きだったよ。
理沙より
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「は、はは…、夢って、
僕は…、理沙のために…、理沙が望んでたことだから、
頑張ってた夢だよ…。バカ……」
さっきの理沙から貰ったお餅の袋が、手に触れる。
紙を開けると、中には小さな紙と指輪が入っていた。
小さな紙には、何か書いてあった。
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天使さんが来て、1つだけ小さな願いを
叶えてくれるって言ったから、
手紙と指輪を渡しに行くことを選びました。
小学生の時に、憲斗にもらった指輪、
東京ではお守り代わりに付けてた。
幸せだったよ。憲斗がいつも頑張ってたから。
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風が吹いて、気付けばお餅の紙も、小さな紙も消えていた。
指輪を握りしめていた手を、僕は恐る恐る開く。
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