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少し温かくなった指輪は、僕の手の中にあった。
全て幻覚であることを望んだのか、
それとも理沙に会えたのが幻じゃないことを望んだのか、
よく分からなかったが、
とにかく指輪があったことに、僕は安堵した。
静かに立ち上がった僕は、笑顔になろうと、
涙の真顔のまま、口角を上げる。
1人ぼっちの僕は、ふらふらと進んで行く。
人混みの中に入ると、擦れ違う人達の声がする。
「願い事、何にしたの?」
僕は瞬きを繰り返す。
願い事…、今の僕の願い事……、理沙の願い事…。
「…笑顔で生きること。
…みんなで仲間だって気付いて、笑って生きること…かな」
僕の瞼に、優しく何かが当たる。
「雪だよっ」
近くにいた小さな男の子の喜ぶ声は、
何だか遠い冬の理沙の声に似ていた。
自然と笑った僕が、空を見上げると、
たくさんの白い雪が舞い降りて来ていた。
通りにいる人々が、笑い合う声が聞こえる。
僕は、まだ止まらない涙を堪えながらも、
少し胸を張って、真っ直ぐ1歩1歩進む―――…
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