さいごの再会

1/8
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

さいごの再会

呼び止められて、振り返るとそこには――… あの日のままの、最愛の君がいた。 僕の人生の答えだって、書いてあるような 可愛い君の瞳と長い黒髪が、揺れて煌めく。 セットもしていなかった僕は、 頭を掻きながら目線と口を震わせ、声を出す。 「り、理沙(りさ)…。と…、東京にいるんじゃ―――…」 ―――15分前――― 賑わう冬の街を、僕は1人で歩いている。 あれ?何でここに来たんだっけ…。 あ、そうだ、地元の大学院での研究が煮詰まって、 2週間ぶりに研究所から出て、 目薬を買いに駅前の商店街まで来たんだ。 周囲では、たくさんのカップルや子連れが 楽しそうに笑っている。 …はぁ。 白いため息の大きさに、近くにいたおじさん達が笑う。 1人ぼっちって…。僕…完全に場違いなとこに来たな…。 あぁ、冬の風って、乾燥してて目に刺さるから、 涙目になるんだよな…。 カップルや家族だらけの楽しそうな街で、 1人で涙目って…。ヤバいな僕…。 息抜きに来たのに、これじゃ公開処刑じゃん…。 僕は、着物を来たカップルを見た。 あ、そうか…みんなこれ、初詣か…。 って、僕もある意味これ、列に並んでんじゃん。 僕は、人混みをどうにか切り抜けて、 商店街の本通りから外れた。 細い裏道は、人通りが少なかったので、 僕はやっと本気の溜め息を吐くことができた。 「寒っ…」 裏道は裏道で、冬の寒さをダイレクトに伝えてきて、 僕は体を震わせる。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!