隙間

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“血染めだ”  この白い手は、こうやって隙間に興味を持つ人間をひたすら待ち、覗いた瞬間に、その長い爪で獲物の目を抉っているんだ。  彼女の爪の色の謎が解けた時、背中に冷たいものが流れた。  その場で腰を抜かしたままの格好で、その手が届かない程度離れた位置から、目を凝らして隙間を見た。  そこには、絶対に人なんて入れない筈なのに……。  五センチなんていう隙間に、絶対に人がいるなんてこと、常識では考えられないのに……。  長い髪の女の人が、言葉では言い表せられないくらい有り得ない格好をし、今の僕と同じ目の高さで、目を合わせてきた。  手は相変わらず、僕が立っていた時の目の高さの位置で指をバラつかせ  カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ……  と気味の悪い音を立てている。
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