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二人の誓いを誤ったことは一度もない。自身の心の拠り所を他に置くこと自体に疑問はあるが、結果だけは称賛に値するだろう。
「解っておる」
――だからこそ私は力を欲しているのだ。
守りたい存在を守れる力を。物理的な力だけではどうにもならない、現実はとても複雑に噛み合っている。
「はいはい、しつもーん! 博士は島中将とどんな関係があったんですかっ!」
ゆかりが直球で尋ねる。彼はにこやかに、もう一つの理由を明かす。
「昔パラグアイに居てね、娘が危ないところを島君に助けられことがあるんだ。イタリアで同一人物だと知った時には、私も驚いたものだよ」
広い世界で意図せずに二度出会う、それだけで奇跡だ。ましてや二回ともよくしてもらったならば、感情は伺い知れる。
――あの人はやはり善人だ。国際犯罪者として指名手配されていても、本質は変わらぬ
教室には、へぇ、といった感じの空気が漂う。
「博士が知る方をご紹介下さい」
「そうだね、ではそうしよう」
最後までご機嫌でルッテは教室から去っていく。島に負けず劣らず善人さを醸し出していた。
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