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組織から見た個人は、存在がどうあれ弱者になりうるのかも知れない。
「あの人がそれを受け入れるならば、そういうものなのであろう」
――何やら寂しいがな。
「ところがだよ、歴史は証明している。一人の英雄は存在が別個の人格として扱われることを」
本人の意思がどこまで届くか、時代を別にして伝わる範囲は狭い。
「偶像崇拝ね」
常にシビアな現実と向き合い続けてきた最近と違い、夕凪もエスコーラに来る前親友のみを崇拝していた。
「政治宣伝もあるだろうし、事実もある。何より感じた側の物差しがそのままというのが歪みの原因だね。それは社会にとってごく当たり前な事象であり、起きない方がおかしいとすら言えるんだよ。本人にとっては何とも言い様のないことだとは思うけれどね」
島中将が蔑ろにされれば周りが許しはしない。悠子は漠然とした何かを理解した。
――私はきっとそれに耐えられない。あの人が頭を横に振ろうと、真っ直ぐに駆け寄ってしまうであろうな。
悠子の機微に夕凪が気付く。
「私の正義は悠子といつも同じよ」
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