《その②》

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ふんふんご機嫌に街を練り歩いていた俺は、そうだ、と思いついた。 せっかくだから、あいつのところに行ってやろう。 いつも俺のことをおざなりにしか扱わない、年上の男。藤吉圭介。 そしてご機嫌に、藤吉写真館の扉を開けた俺だったわけだが、そこで思い知ることになるのだった。 藤吉圭介と言う男の俺に対するぶれの無さと、性格の悪さを、だ。 真夏の美少女な俺の満面の笑みを、頭のてっぺんからつま先まで凝視した後、当時高校生だった奴は、心底いやそうに吐き捨てやがった。 「てめぇ、なんて格好してんだ。龍之介」 一目で俺だとばれてるし。なんか、いつもよりさらにドきついし。 俺のことちやほやしてくれないし。 ぽんっとなにかが飛んだらしい俺は、盛大に泣きわめいて親が迎えに来るまでふて寝を決め込んでやった。ざまぁみろ、藤吉。 だがそれだけじゃ済まさないのが藤吉の藤吉たる所以で、ムカつく所以だ。 畳の上で白いワンピースを纏ったまま、泣き疲れて眠っている少年。少年の周囲に散っているウイッグの長い毛先と、入り込んでいるやわらかい日差し。 『未進化』 これが奴が初めて獲ったでかい写真の賞で、奴のその後の写真家としての歩みを決めた第一歩だった。
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