《その①》

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ぼくは ほんとうは おんなのこになりたかった。 あのひとに無条件にあいされる存在になりたかった。 ……というような訳では一切ないが、ちやほやされた方が人生勝ち組。 性別女と言うだけで俺と同じことをやっているにもかかわらず、周囲から叱られず甘やかされている妹のまりえを見ているうちに悟ったのだ。 あ、これだ。 俺、めちゃくちゃかわいい女の子になるべきだ。 【人気男の娘モデル萩ちゃんの誤算(その①)】 「はい、カット! 良かったよー、萩ちゃん」 カメラマンの柏木さんのご機嫌な声を合図に、撮影は終了。お疲れ、と口々に飛んでくるねぎらいに、俺はにっこり笑みを浮かべて頭を下げる。 小悪魔的な魅力がたまらないとネットその他で絶賛中の男の娘モデル萩ちゃんの性別不詳の魅惑の天使スマイルである。 結局悪魔なのかよ、天使なのかよと言う突込みは愚問である。悪魔だろうが天使だろうが、萩ちゃんは可愛いから、つまり正義なのだ。 「今日もかわいく撮っていただいてありがとうございましたぁ」 あざとくなり過ぎない程度に舌足らずな、のんびりとした喋り方。 普段の自分のトーンより若干高め。男としても違和感はないが、今の美少女の自分の喉から飛び出しても、おかしくはない音。うん、さすが。俺の研究と努力の賜物である。
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