《その①》

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「悠さんが気持ち悪いこと言うからじゃないっすか!」 「気持ち悪いって、見たまんまの事実のつもりだったんだけどなぁ。今日だって、わざわざ萩ちゃん迎えに来てくれたんでしょぉ?」 「それはその、ウチの親に頼まれてるから……じゃないですかね。でも優しくはないですよ。俺、あいつに優しくされた覚えないですもん」 「あぁ、萩ちゃんと藤くん幼馴染、なんだっけ? でもいくら頼まれたにしても、よっぽどじゃなかったらやらないと思うけどなぁ。毎度毎度」 「幼馴染、と言うか、同郷なだけです」 なぜに俺がこんなまるで拗ねたようなことを言わねばならんのだと思わなくもないが、事実だ。 俺より5つも年上なくせに。チビのころから俺はあいつに優しくされた記憶は一切ない。 大体昔から、まりえに対してはそれなりに優しかったくせに、俺には意地悪なことしかしなかったし。 俺が、見た目どれだけ美少女になっても、周囲からまりえに負けず劣らずちやほやされるようになっても――。 あいつだけは現在に至るまで一回も、俺のこと女の子扱いしねぇんだよな。 ちやほやしてくれないし、可愛がってもくれねぇし、愛してもくれない。
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