第1章

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ふと、思い返して見る。1人の時間になるといつも決まって思い返す事それは、ーー私のーー。カップに口付けて、良い香りのするダージリンを鼻の奥に吸い込む。夜風がカーテンを揺らして気持ちがいい。 ーーこんな気持ち初めてだーー 永い時を過ごして、"感情"に左右される事はなかった。どんな事も、何事にも"無"であった私の感情。退屈で"それ"を食べあさるだけしかなかった私。……この深みのあるダージリンの色は、"あの方"の瞳と同じ色。これからダージリンを飲むのは、私の楽しみになりますね。 ーー私の楽しみーー 楽しみなんて、あるのか?と思うぐらいに過ごしていた夜。窓辺に立ち空を見上げる。黄金の月。ーー明日の貴女の寝起きのお顔を早く見て、紅茶を注いで、1日の始まりの熱いキスをして、誰よりも長くお側にいたいーー 私の退屈な毎日に、彩りを与えてくれたお方。孤独な者同士のーー運命ーー ーー"あの方"の性格ーー 光を自ら閉ざされた貴女。高貴で気高くて何事にも決断されて進んで行かれる貴女。嘘を吐くなと私に仰ったのに、嘘を吐いている貴女。私の作ったお料理を、美味しそうに食べる貴女の顔。貴女は、そう。…甘い甘いお砂糖と、誇り高き血と極上のスパイスが香る柔らかい肉……それが貴女。私と出会ったのはただの"気紛れ"で、また"一種の玩具"ーー執着したのは"好き"になったのは多分、その時ーー誰よりも華奢な分、弱いのに、弱いのに、瞳の光は強くて。からかえば、猫の様に振舞ってくる。ー面白くて止められないーー晩餐会やパーティーの時のドレスを纏った貴女はーー綺麗ーーだと素直に思った。一生、見ていたいと思った。ーー誰かの眼に触れられるのは嫌だーーなどと思った貴女のお知り合いの方が貴女に手を掛けているのを見ると、ーー気安く、触らないでくださいーーと思う。笑いながら会話している貴女の横は、私であればいいのに。ーー貴女を監禁して、私しか見えなくなればいいのにーー周りは全て真っ暗なこの闇夜の様にーー"貴女"は今、憎しみも、怒りもない天使の様な顔なのでしょうね。ーー白い額に…いや、唇にキスをしても宜しいですか?ーー許されるなら、今宵は貴女のお側で眠りにつきたいーーいいえ。「私」は"貴女"のお側で眠りにつくことはおこがましいですから。申し訳ありません。布団をちゃんと掛けないとお風邪を召されますから。ね?お嬢様。それでは、良い夢を。
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