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「……参ったな。まさか、丸越たちが動くとは」
那緒たちが閉ざす扉の外で、手も足も出せない風紀委員たちは、説得にあたっていた桜嶺を見つめる。
「どうします、委員長……」
「このまま、体育祭終了まで持ち込むのは何としても避ける」
委員に向き直ると、桜嶺は1人ひとりに視線を配る。
「彼らは同じ親衛隊でも、話は通じる方だ。和解案を見つけろ」
「はいっ」
ハキハキと答える委員の中で、唯一だらりと力を抜いて話を聞いていた委員が手を挙げた。
「あんさぁ、この扉ぶっ壊しちゃ駄目なの?」
「ちょ、優さん!」
副委員長の鹿込優は、欠伸をしながら前へ出る。
周りの牽制の声も聞き流し、扉の前に立つと隣に並ぶ桜嶺に作り笑いを向けた。
「このくらい、桜嶺ならいけんでしょ」
「迂闊な発言は止せ」
「だって面倒臭いじゃん。何でこいつらのワガママに、俺たちが付き合わなきゃなんないの」
桜嶺に咎められると、優はすぐに口角を下げ眉間にシワを寄せた。
「お前の性格はよく知っているが、風紀については俺に従ってもらう」
「……はいはい、分かりました。分かってますよ」
わざとらしいため息をつくと、優は廊下を戻り始める。
「優さん、どこ行くんですか」
「便所ー」
委員たちの間に気まずさが漂う中、桜嶺は閉ざされた扉を見つめた。
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