体育祭の王道なワケ

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「……緊張してんのか?」 俺の隣を歩く央司は、楽器ケースを大切そうに抱きながら顔を強張らせている。 央司の反対隣にいる将輝も、央司の様子を窺う。 「そんな心配すんなよ。あんなに一生懸命、練習してたじゃんか」 「でも……」 「大丈夫。落ち着いてやれば良いんだから」 まだ表情の固い央司の背中から腕を回し、遠い方の肩をポンポンと叩いてやる。 「――ん、ありがと」 それも、所詮は気休め程度の励ましにしかならないのだろうが。 「世の中、意外と何とかなる」 「お前が言うと、妙に説得力あるな」  将輝の激励に思わずツッコむと、央司は眉を下げて小さく笑った。 「……じゃあ、俺あっちだから」 「おう。またあとでな」 「じゃ」 演奏のある管弦楽部は、クラス席の他に専用の席が用意されている。 開会式から演奏するため、央司とはグラウンド入口で別れ、俺と将輝はクラスの方へ向かう。 「そういや、お前が出るやつって結局、マジで内容知らされてねーの?」 「んー」  出場競技をなかなか決められなかった将輝は、クラスメートの推薦で生徒会競技に選出された。 具体的な内容は当日、競技前に発表らしく出場者にも知らされていないらしい。 練習をしなくて済むのは羨ましいが、一体何をさせられるのか。
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