体育祭の王道なワケ

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 昼休みになり、午前の部が終わった。 俺の短距離走は2位を取り、まずまずの結果を残した。 しかし、別コースで走った(わたり)が1位を取り、クラスとしては得点が多く入った。 現時点で、首位のSクラスとは40点程の差があるが、まだ巻き返す可能性は十分ある。  午前は個人競技だったのに対し、午後からは団体競技となる。 央司の出場する騎馬戦も、午後の2つ目に待っているが、団体競技は個人よりも配点が高い。 1つでも1位を取れば、前後の順位は容易に替わる。 「騎馬戦、頑張れよ」 「うん。……って言っても俺、下なんだけどね」  弁当を持参していない俺たちは、校舎に戻り食堂で昼食を取っていた。 「土台がしっかりしてないと、上は闘えないぞ」 将輝の言葉に頷くと、央司はうーん、と首を捻って笑う。 その小さな声も聞き取れるほど、食堂内は静かであることに俺は(いささ)か違和感を感じた。 「……今日、静かだな」 「え? あー、言われてみれば」 いくら弁当組がいないから、とはいえそれは普段も同じだ。 多少、人数に差が出てもおかしくはないが、どうも全体的に人が少ないような気がする。 「……斎藤、戻ってこなかったな」 競技のペアだからか、将輝も気になっていたらしく話を振ってきた。 「え、斎藤くんどこ行ったの?」 「開会式から、もういない」 「え! 初めから、ずっとってこと!?」 央司は、午前中2、3回ほどクラス席に戻ってはきたが、出場中の生徒もいたので斎藤の不在に気が付かなかったのだろう。 驚く央司に肯定を示すと、央司は不安げに俺を見つめた。
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