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「大丈夫かな……」
「この前だって、1限のあといなくなったけど午後にはいたし、平気じゃね?」
「あいつに制裁する馬鹿はいないだろ」
真実が生徒会補佐に就任した前の日、斎藤は2限から教室に姿を見せなかった。
しかし、戻ってきた斎藤に声を掛けると、部活関係ですぐ話さなくてはならない事があったとかで、顧問教員の下を訪ねていたと言っていた。
何についてかは詳しくは知らないが、斎藤に不自然な点は特に無かった。
それに、斎藤はファンクラブがある人気者だ。
何かあれば、ファンが黙っていないだろう。
将輝の言う馬鹿でない限り、斎藤に手を出そうという人物はそういない。
「最悪、競技に間に合えば良いんじゃね?」
「来ないときは梓馬が代わりに出るし」
「いや、出ねーよ!?」
将輝の台詞にツッコミを入れると、央司は何とか笑ってみせた。
「そっか……。大丈夫だね」
「央司、俺を売るのか……!」
「え? ち、違うよ!」
食器同士の軽い音と、細々と聞こえる声の中に俺たちの声は浮き彫りになっていた。
俺と将輝は、この現状について楽観視しすぎていたのかもしれない。
真実への表立ったトラブルがなくなり、油断していたと言っても良い。
結論から言うと、斎藤は出場競技に間に合わなかった。
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