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「僕、ニンゲンだけど、大丈夫だよ!イライザも一緒だし!妖精は好きです!それに人間はあんまし好きじゃないです!だから、一緒に出てきて遊びませんかー?」
アンジェはもう一度大きな声を挙げる。その声にヒソヒソ声も止まってしまう。しばらくは奇妙な静寂が場を支配した。
「アンジェ、たぶんあいつらどっかいっちゃったよ」
イライザが空を見上げているアンジェにいう。
「そっかぁ」
残念そうな声色で、彼は続けた。
「やっぱり僕って人間だもんね、どっからどうみても。まぁ、仕方ないか。っていうか、イライザいつもあんな感じなこと言われるの?」
「まぁね。妖精によるけど。基本的には私たちって自由だし。まぁ、特に困ってもないからアンジェは気にしなくていいよ」
「えー、気にするよー」
妖精のような精霊の類は基本的に世界のマナから生まれる。だから、人間のように家族というものは存在しない。が、コミュニティの様なものは存在するようである。
「そんなことより、いつもの場所いきましょ!」
そう言ってイライザは勢いよく飛んで行ってしまった。全く、ほんとにどっか行っちゃうときばっかり速いんだから。
「ちょっと、待ってって!」
見上げると夕焼け色に染まった木漏れ日が美しい。地面を見ると、あふれ出ているマナがきらきらと光り輝いている。
僕たちは初めて会った場所にいた。ここはマナが噴出してる場所でとってもキレイなんだ。上を見ても奇麗だし、うーんいい時間にきちゃったね!
ここは、森の中心付近であった。この森のマナがあふれ出ている。この辺りはこのマナによって生み出された者たちの胎盤でもあった。
「イライザ、また踊ってよ!」
「また?」
「また!」
アンジェの実直さに微笑をこぼしながらイライザは踊り始めた。その踊りは彼女の思い付きでステップも振りも何もありはしなかった。しかし、それでも妖精の円舞は美しかった。
アンジェが初めてこの場所を見つけたとき、彼は彼女に出会った。薄暗い闇の中、マナの光の中で踊る彼女はとても、とても美しかった。
それで、思わず飛び出ちゃったんだよなぁ、なんか懐かしいや。
アンジェは上機嫌になって、イライザと一緒に踊り始めた。彼も誰かに教わったわけではなかったが、美しい所作であった。彼らはその日、飽きるまで舞踏で言葉を交わし合った。
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