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「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
たどり着いてしまった。彼はたどり着いた。彼はイライザを見つけてしまった。
場所は、森の入り口。アンジェが普段いる生活圏からはかなり離れている。直線距離だけでも一〇キロほどの距離。人間たちから見た森の入り口。
初めはわからなかった。まずそれが生きてたものとは。次第にそれがそうだと分かり始めた。羽はボロボロで、四肢もいくつかは残ってはいる。肌は血や泥に汚れ、元の色はわからない。しかし、彼にはそれが彼女だったと分かった。分かりたくはなかったが、わかってしまった。
「……へぇ」
驚いたことに激情は感じなかった。ただ、静寂で静寂が彼の心を支配していた。
「………妖精も、人間と同じようなことできるんだぁ」
彼の足は間違いなく先ほどいた場所へと帰ろうとしていた。
「なぁんだ、僕もただの人間なんだね、たぶん」
「ばいばい、イライザ」
そう言い残して、復讐者は闇に消えた。
その夜、紫紺の髪の少年は姿を消した。
どうやら、完璧に成功してしまったようだ。私の実力には我がことながら敬服してしまう。魔術回路の再生、複製、安定。どれも成功した。あとはどのように肉体を生み出すかだけが問題になる。母体は純粋なマナが望ましい。肉体という面では人間を通して生み出すのは不完全になる可能性がある。それはよくない。また、余計な情を生み出す可能性もある。これが実によくない。彼は彼であるべきだ。――memo――
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