Pre 彼の世界

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「僕?なんでさ」 「だって、私たちのこと殺さなかったでしょ?」 「そりゃあね」  イライザはよくこの話をする。妖精は、っていうか、妖精だけじゃないみたいなんだけれどね。他の種族をめっためたに殺しちゃったみたいなんだ、人間ってさ。けっこう前の話らしいけれど、どのくらいかは先生に聞かないと分かんない。その中でも妖精はとくにひどかったらしい。イライザもそうだけど、妖精って周りに金色の粉みたいなの飛んでるでしょ?これって傷にとってもいいんだって。それで、人間はこう、妖精をたくさん捕まえて、なんていうか。まぁ、すごく酷いことをしたんだって。本でそう読んだ。 「あっ、イライザ!時間大丈夫?」 えっ?といって太陽の位置を探す。どうやら忘れてたみたい。  太陽は、ほとんど西に沈んでいた。日暮れまでには二人は別れる。二人の決まりだった。 「ほんとだ!これってまずいよね、まずいよね?」 「まずいまずい!急ぎなって!」 「じゃあねアンジェまた今度!」  それだけ残してイライザはさっさと行ってしまった。うーん、相変わらず帰りは速いんだよねぇ。  僕はアンジェ。それ以上でも以下でもないよ?あっ、これは先生の口真似。えーっと、人間で、あと今好きなことは剣術!と本を読むことかな?う~ん魔法はなんか…便利すぎじゃない?いや、できないわけじゃないんだよ?ほんとだって、だってこうしてちゃんと話せてるでしょ?これだって最近習ったばっかりなんだよ?先生も僕のこと「やっぱり逸材は逸材だな」なんて言ってくれたし、それに…。あ、ごめんね、僕ばっかり喋って。えーっと妖精って人間のこと怖いんじゃないかなっておもって軽く自己紹介しなくちゃって思ってね?やっぱり僕、知ることって大事なんじゃないかと思うんだよ。だって、もし知ってれば起こらないですんだよくないこととかあるじゃない?え?例えば…?えーとえーと、例えば、今日僕がスープだと思って食べた朝ごはんが実はゴブリンの言語解釈薬で僕が今日一時間ぐらいレッドゴブリン訛りのゴブリンワードを使わなくちゃいけなかったとかそんなこと起きないじゃない?知ってた?ゴブリンワードって人間で再現しようとすると舌べらが喉の奥の奥の奥の方までね…ってあぁ、そっか、それも説明しなくちゃね
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