ギャンブル

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換金所手前で、そいつが見えて俺は足を止めた。 返り討ち? そんなん怖くねぇよ。 ただ、そいつの状態が、こう、薄気味悪かったんだ。 真横を向いた状態で俺は見つけたんだけど、目と口を大きく開けて、真上を向いて震えてた。 まるでそこだけ空気が無くなっちまったみたいに、喉元に両手を彷徨わせて、足もガクガクさせて。 目ん玉飛び出そうなくらい見開いて、口からは伸びきった舌が横向きでもよく見えたな。 カハッ、とかなんか、そんな空気が抜けるような音がしたと思ったら、チンピラの耳とか、口とか、目とか鼻から、黒いのが出てきた。 たくさんの小さい虫みたいなヤツ。 ……うぅぅ。今思い出しても気持ち悪い。 次々と溢れ出て地べたにぼとぼと落ちていくそれは、どろんと溶けてアスファルトに消えていった。 そしてそれが出てこなくなったら、チンピラは膝から崩れるようにして倒れた。 驚くとさ。 声なんて出せねえんだよな。 チンピラの向いてた方向から893番のジイさんが出てきても、俺は直立不動の姿勢で固まってた。
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