冷血鬼教師

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「高野さん高野さん!お昼一緒にどーですか?」 さらさらとした、長く後ろに束ねた髪が犬の尻尾に見えるのはきっと気のせいなんかじゃない。 何が嬉しいのか、男のくせに、しかも教師と言う立場でありながら、女子生徒をお昼に誘うヒトがいるだろうか? 無駄に顔が整っていて、放たれる異様なオーラはたまったもんじゃない。 「いえ.....遠慮しときます」 一応静かに話しているため、周りの人は気付いていないが、特に女子の視線痛い。 すると先生は少し近付いて 「いいじゃないですか。 昨日の、言いふらしちゃってもいいんですよー?」 声を低めに耳元に囁かれた。 __ああ、やっぱり面倒なことになった。 私はこの時、この胡散臭い教師と関わりを持ってしまった事に酷く後悔した。 遡ること2日。 高校3年生となって数週間経った頃だった。 「さっちゃん頼む!掃除変わってくれ!!」 突然、教室のど真ん中で頭を地面に打ち付けたんじゃないかと思うくらいの勢いで土下座をしたことで、周りがギョッとした。勿論私も 「と、突然どうしたの?!とりあえず頭上げて...」 ゆっくりと立ち上がる私の友人。 「痛い....」 「だろうね」 見事に額のど真ん中が真っ赤に腫れていた。 それを見て辺りで見ていた生徒達が大爆笑した。 友人....畑野朱里(はたの あかり)はそれを睨み付けた。 「掃除は構わないけど...どうしたの?」 保健室で先生に湿布を貼ってもらう様子を見ながら尋ねた。 「うん...弟がさ、風邪ひいちゃって。 ありがとーございます。 ....ほら、うち共働きだろ?午前中は婆ちゃんが面倒みてくれてんだけど、午後から用事があって、他に頼める人がいないんだよ」 確か、朱里の弟はもう中学生のハズ。ただの風邪なら一人にしても大丈夫なんじゃないのかな... そんな疑問が浮かぶと、朱里はすぐに答えを語ってくれた。 「もう中2だから放っといてもいいんだけど、あれでも喘息持ちだから、風邪引いたら何かと心配でよ....だから頼む!明日何か奢るからさ!」 そういうことか。それならただの風邪でも、喘息持ちには、それ以上に辛い状況だ 「いいよ、だったらもう帰ってあげたら?残ってるの朱里の得意科目だけだし、先生には私が言っておくから」 「そうする。ありがとな!」
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