序章

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大学が始まる前に原付を購入する。 アルバイトやお年玉の金額はそこそこ通帳に残っていた。 実際、祖父は僕に相当な財産を残してくれていたみたいで、大学の授業料や入学金はそこから出ている。 祖父の子供は、僕の実の父だけで最終的な相続人は、僕だけなのだ。 その事に実感もなく、あまり興味もない。 ある日、呼び出された弁護士事務所で色々と説明を受けた。 僕が大学を卒業するまで、その弁護士さんが管理をするらしい。 僕に異論がある筈も無く、幾つかの書類にサインをした。 今の父は普通のサラリーマンで、僕も負担はかけたくない。 僕は最低限の仕送りだけをお願いして、バイトをしながら四年間過ごす事を決めている。 結局、僕は祖父の恩恵がなければ横浜を選ぶ事はなかっただろう。 ゼミを選び、オリエンテーションを受け、サークルの勧誘を躱し、アルバイトを探す。 バタバタと忙しくしながら、合間の時間で「横浜」を探した。
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