501人が本棚に入れています
本棚に追加
/355ページ
結論から言えば、物凄く濃厚な一日だった。
疑問は幾らでもある。どうして、わざわざ槙村さんがあの話を聞かせたのか?だとか……
時折感じた不自然な雰囲気もそうだ。
エシュゾーは、濃厚で豊潤でこの上なく美味しくて、思わず部屋に戻りネットで検索して目を疑った。
僕が就職しても、初任給ではとても足りない金額なのだ。
ユキさんのお父さんの話は出たけれど、相続した事を考えれば亡くなったのかもしれない。
もちろん、全てを聞かされる筈も無いし、聞く理由もなくて、ワインと美味しいお肉も食べさせて貰い満腹で幸せなのだ。
『だからね。月に一度のディナーは、私からのお礼なの』
ユキさんはそんな風に言った。瑠衣さんは、やっぱり駆け出しの料理人で毎月のディナーは料理を批評して貰う場所でもあるみたいだ。
結局、僕だけがおこぼれに預かる形になるのだろう。
何せ、僕の払う家賃ではグラス一杯のエシュゾーに遠く及ばないのだ。
ともあれ、山手213番館での一日はこんな風に終わった。
最初のコメントを投稿しよう!