第一章 野望
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桜が散り、そろそろ街を通り抜ける風が初夏の匂いを運ぶ、五月のはじめに起きた出来事だ。 鍵を開けて部屋に入った景子の父、恵介は中に入るなり顔をしかめた。 一人暮らしの男の部屋とは思えないほど整理整頓されていたが、マンション五階の一室にある色川誠(いろかわまこと)の住居は典型的なオタクの巣だった。
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