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柔らかく滑らかなものが、僕の口に割り入ってくる。それは、それ自体が生きているかのように、僕の口の中で蠢いている。僕の頭の芯に、電気のようなものが走り、僕の思考を奪っていた。だから、
「ね、いい? シテ、いい?」
何も考えず、その日比谷さんの言葉に頷いた。彼女はそれを確認すると、僕から離れる。そこにあった温もりがなくなり、僕は心細さを感じると共に、平静さを取り戻し始めた。
「良かった。誰にも見つからなかったみたい」
日比谷さんが何かを持って、戻ってくる。それが何なのか、はっきり分からないが、何となく嫌な予感がする。
しかしそんな予感は、床に横たわった僕の全身を這う日比谷さんの唇に、霧散していった。日比谷さんの唇が印を付けた場所は熱を持ち、僕自身も熱く滾っていく。下腹部に近づく唇。手のひらには、何かヌルリとした液体のようなものを塗っているようだ。肌を緩やかに滑っては、僕の感覚を呼び覚ます。そして唇よりも先に僕自身に達していた。その指先がゆっくりとうごき、そして……。
その感覚に、僕の熱は急激に冷めていった。彼女の指先が僕の中に入ってきたからだ。僕は体内を蠢くその感覚に、変な気分になりながら、声を振り絞った。
「ひ、日比谷っ、さん……や、ダメです、んぅぅ……」
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