第三話

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あの灰まみれの場所で転んだにもかかわらず、服にも顔にも一切灰がついていない。ソラは恐る恐る床を見る。芝生が生い茂っていたはずのそこには、白いだけの床があった。ソラは座り込んだまま周りを見渡す。真っ白でどこからどこまでが道なのか、どこに壁があるのかなどがさっぱりわからない。漂う霧でさえ灰色に濁っているように感じるほどだ。 「ここは……」 ソラはぽつりとつぶやくと、その声はじわりと滲むだけで響くことなくその場にしみこんでいった。 ーーハコ主の心みたい。 ハコ破りをするときにハコ主の心の声を直接聞いてスズ持ちが背中を押す、あの場所にとてもよく似ている。ソラは深く息を吸う。鼻をかすめて肺にあふれていく空気は、帝国のものよりはるかに澄んでいた。 『カゴはハコみたいなもんだ』 リクが別れる前に話していた言葉だ。この言葉通り考えるなら、ソラが転んで行きついたこの場所はカゴということになる。足に響かないようにゆっくりと立ち上がると、一歩足を進めてみた。スニーカーのゴムがぱたんと安っぽい音を立てる。 「こんなに空っぽじゃ、どこに行けばいいのかわからないよ……」 ーーねえ、ニーナ。
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