第二話

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「ソラ、えらかったな。ソラがしっかり伝えてくれたおかげで電話がすぐにすんだ。今からお母さんを病院まで送るから、その準備を少し手伝ってくれ。 洗面所からタオルを一枚と病院に行くときにいつも持っていく手帳、それから水筒に水を半分入れてきてくれ。車まで運んでくれたらいいから」 「うん、わかった」 ずれた眼鏡の奥の父の目に頷き返して、ソラはその場に立ち上がる。広くて大きな掌が母の背中を撫でるのを見て、ニーナと一緒に部屋を出た。「立てる? ちょっと階段まで行こうか」と母に優しく話しかける父の声を聞いて、ニーナはゆっくりと首をかしげる。 「ソラのお母さんは何か病気なの?」 転がるようにして階段を下りたソラが、キッチンの水筒に水を入れながら「違うよ」と返す。ペットボトルの水をちょうど半分まで入れると、キャップを閉じて水筒のふたもしめた。きゅっとゴムが擦れる音が静かなキッチンにさびしく鳴る。廊下を歩いて洗面所まで行くと、引き出しからタオルを一枚選んで抱える。それを別の引き出しに入っている手提げバッグに入れて洗面所を飛び出した。 「お母さん、おなかに赤ちゃんがいるんだ。もうすぐ生まれるんだって」 ソラの後について歩いてきていたニーナは足音をぺたぺた鳴らしながらふうんと返す。
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