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リビングにある子棚の中から「小寺咲喜」と書いてあるクリアケースも手提げに入れて、ウッドデッキのほうへ向かう。カーテンを開けると真っ暗な外に家の中の光が差し込んで、地面に殴りかかるように降っている雨が鋭く光った。母がいつも履いているやわらかいゴム製のサンダルを玄関から運んで、デッキのカギを開ける。たちまちソラの耳にはバケツをひっくり返したような音が耳に舞い込んできた。サンダルを外に置いてから父の車のカギをつかんで車の後部座席の扉を開く。そうして戻ってくる頃には、ちょうど母が父に支えられながら階段から下りてきたところだった。
「お、ソラありがとな」
父はソラに笑いかけて、母を連れてデッキを下りていく。母を乗せると跳ねるようにしてデッキに戻ってきた父は、ソラから手提げと車のカギを受け取って別の手でまたソラの頭をなでる。くせ毛は雨の日の湿気でいつもよりずっとふわふわふくらむ。ソラや父の頭も、ポンのようになっていた。
「ご飯は炊飯器に残っているからそれを温めて、冷蔵庫に昨日の残りのおかずがあるからそれと一緒に食べて。お味噌汁もあるから温めると飲めるよ。父さんが玄関に置いたままの買ってきたものは後で冷蔵庫に入れておいて。ポンの世話もよろしくな。
ごめんな、すぐ戻るから留守は頼んだぞ。なにかあったら父さんの携帯番号のメモ見てかけておいで」
ソラは黙って頷いた。ボクも行きたい、とはさすがに言えなかった。
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