第二話

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ガレージから出ていく車を見ながら静かに鍵を閉める。フローリングの床で爪を鳴らしながらポンがソラのそばに駆け寄ってきた。尾を振りながらソラの顔をちらちら見てその場にそっと座る。外の音が入らなくなった家の中はしんと静かになった。外が暗いため、ガラスの大きな窓にはソラとポンの姿がまるで鏡のように映る。ニーナがガラスにそっと手を添えると、そこだけがじわりと曇る。そのようすを見て、ソラは大きく息を吸った。 「ポン、おなか空かない? ごはんにしようか」 「ごはん」という言葉に反応してポンはぴょんと飛び跳ねてソラのまわりをくるくる回った。それを見てニーナも笑う。ソラの頬にやや赤みが戻った。ソラは、ダイニングのすみにあるポンの小屋の隣に置いてあるフードの大袋に計量カップを入れる。いくつかすくってポンのフードを入れる器に入れる。「おすわり、お手」とソラに言われたとおりに動くと、ポンはごはんにありつくことができた。カラカラと固い音をたてながら急いで小柄な欠片を舌でなめとるさまは、あまりにもいつも通りでソラは慰められる。 「ソ、ソラ……あの……」 どこか心配そうにソラをちらちら見ているニーナに、ソラは大きな声をあげて笑った。 広い家の中に、幼い声が反響する。ニーナは目を丸くしてその様子を見ていた。無理して笑っているのは間違いないのに、ニーナも一緒に笑いたくなった。息が持つまでいっぱいに笑って、ソラは大きく背伸びをする。振り上げた両手をそっと下におろすと、今度は優しくニーナに笑んだ。
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