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明るく話してソラの肩をたたく姿は、先ほど大きな声で笑ったソラとよく似ていた。白いスカートがひらりと揺れて、大げさかもしれないがソラにはそれが天使の羽のように見えた。ありがとう、と返して二人で玄関へ向かう。後ろからポンも踊るように歩きながらついてきた。廊下の先に、投げ捨てられたせいか中身があふれ出たバッグが転がっている。誰もいない玄関の明かりは消えており、廊下のわずかな光がバッグをさびしく照らしていた。ソラは無意識に足を止める。その隣から、ニーナはバッグに駆け寄りソラをふりかえる。その笑顔はひどく明るい。ニーナの細い腕では支えきれそうもない大きなバッグを、両手で持ち上げようと奮闘している姿にソラも慌ててかけより手を貸した。ソラが玄関へ行ったことで人感センサーが反応し明かりがつく。突然明るくなった玄関に二人は顔を見合わせて笑った。ソラの涙は、もう跡形もなくなっていた。
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「小寺爽良、二分十五秒!!」
室内プールに歓声が響く。大きな拍手に包まれて、ソラはそっと唇をかんだ。肌身離さないようにとニーナに言われたスズは、ロッカーにあるプールバッグにつけかえられていた。
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