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スズ持ちになってからというもの、帝国との正式な契約をしていないにも関わらずソラのタイムは急激に伸びた。それは本来ソラが持っていたもともとの力が引き出されているのだとニーナは話したが、それにしても、もともとよかった記録がますます伸びていく姿は、誰が見ても驚異的で、小さなスイミングスクールにはとても抱えられるものではなかった。そして今日のタイムが、スズ持ちになって一番のタイムだった。肩を握るコーチの手が、ソラには重く、地面に沈み込んでしまうのではないかと思えた。
「小寺、ここ数日で一気にタイムがよくなったな。最近なんだか気分がよくなかったらしいがタイムは順調だな」
「あ、ありがとうございます」
「ここまで好調だと検定も安心して受けられるな。小寺さえよければ次の大会にここの生徒と一緒に出ないか? なあ! お前らリレーで次出たいって言ってたやついたよな!」
コーチが、タイムを報告している何人かの集まりに声をかける。ソラがリレーに出ようとしていると思ったのか、あたりがわっと盛り上がって「はい!」と勢いよく答えながら期待のまなざしをソラに向ける。ソラはごくりと息をのんだ。仮契約の時点でもうこんなにも変化がでているのに、もし帝国と本格的な契約をしてしまったら一体ソラはどうなるのだろうか。想像することができず、ソラはぞっとした。慌てて首を振る。
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