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「……わからない。昔は確かに好きだったのに」
口先だけでつぶやくように話したソラが、ちらりとニーナを見る。まぶしかったはずのライトブルーには、大雨でも降るかのような暗い色がさしていた。声色の影がそれに拍車をかける。
「二、ニーナ、どうしたの? 何か悲しいの? 苦しいの?」
どうしたもこうしたも、自分のせいかもしれないということはソラはなんとなく感じていたが、それを言い出す勇気と、何かほかに原因があるのかもしれないという思いが、ソラの言葉を遠回りにさせる。扉の向こうから、「ソラいるかー!」と叫ぶ父の声がする。おそらく階段の下からソラを呼んでいるのだろう。ソラは「いるよー!」と叫んで返し、ソファから立ち上がった。そのまま部屋を出ていく。扉のすぐ外にはポンが待ちかまえており、ソラが出ていくのとすれ違うように部屋に飛び込んだ。
わずかに開いた扉の向こうから聞こえるソラの足音が、遠ざかっていく。ポンと二人きりになったニーナは膝を抱えて口を開く。ポンの黒い頭をそっと撫でた。ソファーの溝に埋まって丸くなったポンは不思議そうにニーナを見上げた。
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