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「そうか、それなら少しゆっくり考えようか。もうじきごはんもできるから、ポンを呼んでおいで」
「うん、そうする」
ソラが身構えていたよりもすんなりとことが進み、父は穏やかな笑顔で頷いた。前に躓いたかのような気持ちになりながらソラは再び階段を上がる。これまで喉の奥に詰まって言うに言い出せなかった言葉は、父の笑顔に受け取られた。
ーーこんなことなら、もっと早くに言えばよかった。
安心して小さく息をつきながら階段を上る。これまでの自分の悩みがひどくちっぽけなものに思えた。
「ねえ、ニーナ。聞いて!」
自分の部屋に入って電気をつけると、ポンがソファに寝転がったままソラを見る。ソラが近づくと尻尾を振ってかけよってきた。ニーナの返事はない。ソラはポンが部屋から出ていかないのを見てから扉を閉める。部屋を出るまではソファにいたニーナの姿はなかった。
「あれ、ニーナ?」
ーースズに戻ったのかな。それなら、話すのはまたあとでもいいか。
ポン、ごはんだよ、とポンに話しかけながらソラは部屋を出る。ポンの背中に、ホコリのような白い粉がついているのをソラが見つけて手で掃う。「どこでそんなに汚れてきたの~」と笑って、階段を下りた。ソラに掃われた粉は床に落ちることなく消えていった。
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