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「あの……」
「失礼するよ~」
何か話さなければならないと思い、ソラは思い切って声を出す。タイミング悪く、ちょうど部屋の扉があいた。お盆にお茶の入ったガラスコップを三つ乗せた父が入ってくる。クッキーの入ったかごをテーブルに置き、リクたちにそっと笑いかけてから何も言うことなくすぐに部屋を出て行った。遠ざかるスリッパの音が、部屋の静かさを強調した。ソラは、リクがガラスコップのお茶を喉に流し込むのを見て、そっとうつむいた。なぜか悲しくなるほどに気まずい。自分が隠し事をしているから、やましいことがあるから気まずく感じてしまっているだけなのかもしれないが、どうであろうともこの部屋を支配する静かさに、心地よさはなかった。
ソラの家でよく飲まれるお茶は麦茶ではなくルイボスティーで、リクが傾けるガラスコップの中も紅茶のように、茶色に混じってところどころ赤く光る。ぬるりとコップを滑ってリクの口の中に吸い込まれていったお茶は帰ってくることはない。リクがコップを置くころ、コップのなかは少しさびしくなっていた。ふう、息をつくリクに、ハナは黙ってちらりと目をやった。ため息をつくように肩をすくめて、そばに置いていた手提げをソラに差し出す。リクがようやく口を開く。
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