47人が本棚に入れています
本棚に追加
「心配かけてごめんね、ありがとう」
「いいってことよ。素直に礼が言える奴は、嫌いじゃないぜ」
「ねえ、それ誰のものまねなの?」
ふふ、と笑い合って空気がなごむ。リクが向き直って、猫のクッションをいじりながら、「でもな」と言葉をつづけた。目は、クッションの動きに合わせて動いている。
「ニコラスのニーナに連絡すれば、帝国側からニコラスに干渉できたはずなんだよなあ。あれ、なんでうまくいかなかったんだろ。ニコラスもしかして昨日帝国に行ってた?」
「あ、いや……」
ソラは、今しかないと思った。パジャマのすそをぎゅっとにぎって、うつむく。「そのことなんだけど」と恐る恐るきりだした。もう、止まることはできない。
「ニーナ、いなくなっちゃったんだ。多分」
控えめなソラの声。信じられないというような顔で目を剥くようにしてソラが言った言葉の意味をかみしめるリク。その隣で、ハナはしょんぼりとまゆを下げた。誰が何を言えばいいのか分からなくなり、部屋はしんと静まり返る。下の階からポンが吠える声が聞こえてきた。ソラは、あげていた顔をゆっくりとあげ、ハナとリクの顔を順番に見る。ハナは、ごくりと息をのんで、そっと息を吸った。
最初のコメントを投稿しよう!