第三話

14/93
前へ
/237ページ
次へ
「ニコラス君、スズはどうなってる?」 「スズ? スズならありますけど……」 ソラはそっと立ち上がって、デスクのわきにかけてあるランドセルからスズを外してハナに見せた。スズは相変わらず周りの光を好きなように吸い込んで、好きなように光っていた。スズを乗せたソラの手を覗き込んだリクが、首をかしげながら「あれ?」と声を出す。 「変だぞ、ニコラス。もし仮だとしても帝国との契約が切れたのなら、スズは割れたりなくなったりするはずだぜ」 「え、そうなの? ……じゃあ、もしかしてニーナはまだいる?」 「え、えええと……いるんじゃねえの、だってスズがなんともないってことは、帝国との契約もなんともねえってことだし……」 リクは「ええと」と言いながら、自分で話していることを確認するように何度も頷きながら話す。最後にリクがハナを見て助けを求めると、ハナはリクにゆっくり頷いて、それからソラに真剣なまなざしを向ける。ソラは、思わず背筋を伸ばした。 「私ね、少し気になっていたの。ニコラス君の仮契約期間が、少し長いような気がして」 「仮契約の期間、ですか? ボク、ニーナと出会ってからまだ一週間ぐらいしか経ってないですけど……」
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加