1910人が本棚に入れています
本棚に追加
柊聖さんの恋人が泣いた理由。
多分それは、柊聖さんの人柄に、他の誰かが惹かれてしまうんじゃないかという不安。
それをわかってくれない柊聖さんへの怒り。
あ、と思った。
夜神も同じか。
夜神も、その恋人と同じ気持ちだったのかな。
なんで、客観的にならないとわからないんだろう。
夜神もオレも、互いを好きだからこそ、冷静になれなくなる。
端から見れば簡単に導き出せる答えなのに。
「別れた直接の原因はそれじゃないけど、少なからず要因の1つだったとは思う。終わってから気づくこともあるんだよね。」
「………」
「でも、君達には終わってほしくないな。旅先でたまたま知り合っただけの人間に警戒心剥き出しにするほど、彼は君のことが大切みたいだからさ。」
「う…」
「向き合って話してみたら?」
柊聖さんの手が優しくオレの頭を撫でる。
夜神みたいに大きくて温かい手だ。
…でも。
オレが心から安心できる手じゃ、ない。
触れられるだけでドキドキして、心が温まる手は、この世で1人だけだ。
最初のコメントを投稿しよう!