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「頭冷やすって、どこでたよ…」
やけに広く感じる部屋の真ん中でぼんやり立ち尽くしながら、そう独りごちる。
夜神を捜しに行きたいけど、どこに行ったかなんて見当もつかない。
いつまで頭を冷やすつもりなのかもわからない。
だから待つしかない。
待つしかないのだけど。
「…っ」
スマホを起動させ、電話帳から夜神の名前を捜す。
一瞬躊躇ったが、ここで動かなきゃダメだと思った。
スマホを耳に当て、祈るような気持ちでコール音を聞く。
『…アキ?』
「!!」
何コールかしてやっと聞こえた声に、胸が詰まりそうになる。
声を聞いただけで泣きそうとか、どんだけだよ。
『もしもし? アキ、どうした?』
…しまった。
言葉を失っている場合じゃなかった。
それより、電話の向こうの夜神の声は、至って冷静というか…普通だ。
もっと不機嫌なトーンを想像していただけに、違和感を覚えた。
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