おとなしくしてろよ

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キレ気味に言われてたじろいでいると、アキは俺を押し退けて部屋に入った。 その手には、ビニール袋。 ペットボトルらしき物や、それ以外の物が入っているのが見える。 「何か食べたのか?」 くるっと振り向いたアキがそう訊ねた。 「…何も。」 「何も?」 「ああ。食欲なかったから。」 「そんなんじゃ治るモンも治らないだろ。」 アキは呆れたように溜め息をつくと、ずい、と俺の鼻先にビニール袋を突き出した。 思わず受け取って中身を見ると、スポーツ飲料やおにぎりがあった。 俺はぼんやりとそれらを眺めた後、目の前で佇むアキに視線を戻した。 「…つか…アンタ、学校は?」 口から出たのは、礼ではなく疑問。 するとアキの表情が気まずそうに歪められた。 「………」 「今日、フツーに学校あんだろ。」 「………」 「アキ?」 「あーもーうるさいっ! お前が風邪でぶっ倒れたって言うから、学校どころじゃなかったんだよ!」 やはりキレ気味でそう言ったアキに、俺は驚いて手に持った袋を落としそうになる。 あの、真面目なアキが。 学校じゃなく、俺を優先させた? …ヤバイ。 すげぇ…嬉しい。
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