目に見える証

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「あたしの高校の時の友達が結婚するっぽい。」 「友達? え、タメだよね? 大学生?」 「ううん、社会人。高卒で働いてんの。」 「へぇ~マジ?」 講義が始まる数分前に、後ろの席からそんな会話が聞こえてきた。 “高卒”で“結婚”。 今時あまり珍しくもないフレーズだ。 木曜日の、午前中最後の講義。 学科必修の科目。夜神には関係のない講義だから、受講するのはオレだけ。 夜神はこの時間は別の科目を履修している。 広くもなく狭くもない広さの教室だし、教壇からは学生全員の顔を見渡せる。 だから、履修していない人間が途中から潜り込むとすぐにバレるのだ。 …まぁ、履修していなくても、受講したくてわざわざ教室に来る学生に対して、教授も悪い気はしないと思うけど。 夜神と再会して、早1年。 気づけばオレは、3年生になっていた。
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