目に見える証

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…嫌だな。 他人の何気ない会話1つに、なんでこんな気持ちになる? “結婚” 気づいていなかったワケじゃない。 ただ見て見ぬフリをしていただけ。 3年生になって、そろそろ就活に向けて動き出さなきゃいけない時期ということもあって、今のオレには余計に重くのしかかった。 ものすごーく冷静に、客観的にオレ達の関係を見てみれば、それは“生産性のない”モノ。 異性同士で結婚して、子どもを産んで、親を安心させて…そうして、子孫を残していく。 それが一般的で、そして自然な形だ。 じゃあオレと夜神は? それができる? できるワケないじゃないか。 「─────アキ?」 隣から自分を呼ぶ声に、ふと現実に引き戻された。 午前の講義も終わり、昼休み。 夜神と待ち合わせて、大学構内にある広場のベンチで昼食を取っていた。 やば。ついつい自分の世界にトリップしてしまっていた。
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