おとなしくしてろよ

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「…いーよ、別に。」 考えこむアキに近寄り、その手を握る。 「そこまでしなくても、いい。」 アキがキョトンとした顔で俺を見上げている。 やっぱり可愛い。 海翔のように、特別目立つ容姿をしているワケでもないのに、とても可愛いと思えてしまうのは、好きで好きで仕方がないからなんだろう。 他人からすれば何てことのないところも全て良く見える。 惚れるというのはそういうことだ。 「いいって…あんなおにぎりじゃ、足りないだろ。」 「足りる。」 「いや足りないって。オレ、スーパーで材料───」 「いいから。」 尚も言い募るアキを遮り、さっきまで俺が寝ていた布団まで誘導する。 「アキが来てくれただけで充分嬉しいから。アキが傍にいるだけで、俺は満足だから。」 「………」 「今日はたまたま熱出しただけだし、普段はそう簡単に体調崩したりしねぇんだよ、俺は。何かテキトーに胃に入れて寝てりゃ明日には治る。」 「ホントにテキトーだな…」 「ホントだよ。だからアキはわざわざ何かしてくれようとしなくていい。」
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