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「すげー…いい眺め。」
転落防止の柵に凭れて暫く景色を眺めていると、夜神もオレの隣に立って言った。
「本当はここには来る予定なかったけど。アンタがまた何か抱え込んでるから、せっかくだからここで吐かせてスッキリさせようと思ってな?」
「何だよソレ…」
悪戯っぽく笑う夜神に、オレは苦笑する。
何だか、今まで悩んでたのが馬鹿みたいに思えてきた。
というかまぁ、せっかく夜神がこんな所まで連れてきてくれたんだ。
この期に及んでだんまり決め込むのは良くない。
「…で? 昨日の夜、俺が女と2人で居酒屋に入ってくのを、アンタは見たんだっけか?」
「う、ん…」
「それでアンタは…俺が浮気したと疑ったのか?」
「疑ったワケじゃない、けど…」
「けど?」
「…不安になった。お前の浮気じゃなくて、将来のことが。」
「…将来?」
怪訝そうな顔をする夜神。
今の流れで、突然“将来”の話になったら当然怪訝に思うだろう。
「オレさ、そろそろ就活が始まる時期じゃん? そうなると、当然将来のこととか真剣に考えるようになってくるワケだし…
その上オレの学科の子が、知り合いが結婚したって話をしてて……オレ、このままずっと夜神と一緒にいられるのかなって。」
「………」
「オレは夜神のことがすごく好きだし、夜神とこの先一緒にいられるなら、結婚なんかしなくてもいいし、今まで積み上げてきた物全部捨ててもいいとさえ思ってる。それが正しくても、正しくなくても。
でも…そう思ってるのはオレだけかもしれない。夜神の気持ちは信じてるけど、“気持ち”だけで……一緒にいたいっていう気持ちだけで、ずっとずっと、好きな人と生きていけるのか、それが…………どうしようもなく不安だった。だから昨日、夜神が女の子と2人で歩いてるのを見て、余計不安になった。」
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