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次に連れてこられたのは、小さな建物だった。
当然だけど、オレは来たことがない。
でも鉛筆のような尖った屋根から、大体どんな建物かは想像がつく。
確信はないけど。
夜神はオレの手を握りながら、少し古びた木製の扉を開いた。
「あ…」
扉を開いた先に広がる景色。
写真とかでしか目にしたことがない。
まさに教会、だった。
何列も連なる長椅子。
360度散りばめられたステンドグラスを通じて注ぎ込む日光が、とても綺麗だ。
そしてその向こうには、大きな十字架が高々と掲げられていて、そこにはキリストが磔にされている。
シンと静まり返る空間の中で、その存在はあまりにも荘厳で。
オレの目は、ただ釘付けになっていた。
「見学の方ですか?」
不意に背後から声がした。
驚いて振り向くと、そこには穏やかな顔つきの男性がいた。
白のワイシャツの上にベージュのベストを着ている。
見た目からして、50代くらい。
違ってたらごめんなさいだけど。
「そうです。」
「私はこの教会の管理人をしている者です。教会と言っても形だけで、今となってはどなたかが訪れる方が珍しいんですよ。」
確かに、オレの知ってる教会は、結婚式をしていたり、礼拝をしていたりする所だ。
車でここまで来る途中も、人が多く住んでいる様子もなく、到着する数分前からはほとんど建物を見かけなかった。
だから、教会と言われてもいまいちピンとこなかったのだ。
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