目に見える証

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「少しだけ、この場所を借りてもいいですか? …できれば、2人で。」 夜神がそう訊ねると、管理人の男性はニッコリ笑った。 「勿論、いいですよ。誰かがこうして来てくださるだけでも、キリストは喜ばれます。」 管理人はそう言って、静かに扉を閉めた。 扉が閉まる音が響き渡り──────そして静かになる。 ここにいるのは、オレと、夜神。 2人きりだ。 2人きりなのは今に始まったことじゃないし、とっくに同棲までしているのに。 それなのに、緊張している。 多分この教会という場所の空気に呑まれているからかもしれない。 教会という神聖な場所で、恋人と、2人きり。 他には誰もいない。 誰にも邪魔されることはない。
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