目に見える証

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「アキ…来いよ。」 静寂を破るように、夜神がそう言った。 夜神はオレの手を引き、祭壇の方へと歩みを進めていく。 オレはと言うと、覚束ない足取りでよろよろと後を付いていくことしかできない。 ここは形だけと言えど、れっきとした教会。 そこに恋人であるオレを連れてきた意味。 オレじゃなくても、察しがつく───────── 「アキ、こっち。」 「…っ」 促されるまま、オレは祭壇の前、夜神の隣に立つ。 心なしか、足が震えている気がする。 「─────アキ。」 名を呼ばれて、ゆるゆると夜神の方を向く。 夜神はオレの好きな────とても優しい表情をして、まっすぐにオレを見つめていた。 オレと出会うまでは恐らく孤独だけを見つめてきたその冷たく鋭い双眸が、オレに向けられる時は優しく光る。 オレだけを想ってくれている証拠だった。 「俺がアンタをここに連れてきた意味……もうわかるよな?」 「…っ…」 「アキ、左手出して。」 言われるがまま、オレは自分の左手を夜神に差し出した。 そっと薬指に嵌められたのは、見紛うこと無きシルバーリング。 日光を浴びて、鈍く輝いている。 呆然とそれを見つめていると、夜神の苦笑混じりの声が頭上から降ってきた。
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